2013年06月29日

位相について考える

今回は位相について考えてみます。

●位相とは

まず音が波であるというのは誰しもが知っていることだと思います。DAWや波形編集ソフトの画面で、波打った曲線を見たことがあると思いますが、ざっくり位相とは何かというと「ある決まった時点での波の高さ」だと思えばいいかと。ていうか位相とは何かっていうことより「位相がずれる」というのがどういうことかを知ったほうが早く理解できそうな気がします。ちょっとこのへんは説明を端折りますのでググってくださいw

ここで注意しておかないといけないのは「音と音を重ねあわせた時、必ずしも2つの音が聞こえてくる、つまり足し算の結果が+になるとは限らない」ということ。例えば逆相の音を重ね合わせると無音になります。
最近ではノイズキャンセル機能の付いたヘッドホンが結構安価で手に入るようになってきましたが、あれはこの原理を使っているわけです。ヘッドホン自体にマイクが付いていて、ヘッドホンの外から入ってくるノイズを集音。その音を逆位相にしてヘッドホンのスピーカーから音楽と一緒に出力することで、耳に音が届く時にはノイズが相殺されて聞こえないようになるわけです。


●マイクとラインのズレ

さて、このブログを読んでる方には、押尾さんを始め多くのフィンガーピッカーが採用しているような複数のPUを組み合わせたシステムを使っている方も多いと思います。特に多いのが貼りピエゾとマグネチックPUの組み合わせで、プロの手でちゃんとセッティングされたものならば、おそらくPU間の位相がずれまくっていたり反転してたりってことはないはずです。
あ、そういえばニコピンみたいな貼りピエゾを複数枚使ってるのって、位相はどうなってるんでしょうね?ヤマハのシステムでピエゾを5枚使っているやつとかありましたけど、なんか位相がぐちゃぐちゃになってそうな予感…。

ちょっと話がそれました。
で、とりあえずラインに関しては位相が問題ないと仮定して、気をつけないといけないのはマイクの音を組み合わせる場合です。特にちょっとオフ目にマイクを立ててたりする場合。

ここでちょっと計算してみましょう。

音が空気中を伝わる速度は大体340m/sと言われています。湿度や気温、気圧によって若干変化しますが、ギターを使用する環境で±10m/sは変わらないはずです。
で、仮に1弦開放のEの音をポーンと鳴らしたとします。この音の周波数は大体330Hz。音が1秒間に進める距離が340mで、その間に330回振動していることになるので、音波の空気中での波長(山から山の距離)は 340 ÷ 330 = 1.03m となります。

これは、音の出所とマイクの距離が仮に1mだったとすると、その間に音の波がひと山(1周期分)存在するということです。こんな感じでイメージみてください。(実際の音波は疎密波なのでちょっと違いますが)

波形.png

とするときれいな正弦波の場合、半周期ずれると位相が反転することになるので、マイクとの距離が50cmの場合にPUの音とマイクの音が相殺されることになります。


本当に計算の通りかどうか実験してみましょう。

実験にはなるべく正弦波に近いハーモニクスの音を使います。5弦5Fのハーモニクスは440Hzなので、この音の波長は 340 ÷ 440 = 約77cm。つまりマイクを77cm離した時に1周期分ずれて、その半分の38.5cmでPUの音とほぼ打ち消しあうことになるはずです。

まずマイクとサウンドホールを約77cm離した場合の、マイクとコンタクトPUそれぞれの波形を見ると

77cm.png

こんな感じになります。
ほとんど山の形が一致していますね。


次にマイクとサウンドホールを約38cm離した場合について同様に波形を見ると

38cm.png

こんな感じ。
ほぼ逆向きの山になっています。

これらを重ねあわせた音を聞いてみると、完全な正弦波でなく、また完全な逆位相にもなっていないので無音というわけにはいきませんが、打ち消し合っているというのは聴いて取れます。


●ラインとマイクの音を同期させる

そこで、じゃ実際どうすればいいのよ?って話になります。
これまでの話でマイクに集音された音は、ラインの音より空気を伝わる分遅れているということは、お分かりかと思います。ならば、マイクとラインの音を同期させるには、

1.マイクのチャンネルを時間軸上で−の方向にずらす。(前に進める)
2.ラインのチャンネルを時間軸上で+の方向にずらす。(遅らせる)

のどちらかが必要になります。
1の方法で手でリージョンをずらしてもいいんですが、2の方法だとLogicの場合プラグインで対応出来ます。SampleDelayというプラグインがそれで、任意の指定したサンプル数分遅らせることができます。

sampleDelay.png

例えばサンプリング周波数44100Hzで録音したものについて、1サンプル分遅らせた場合だと、

 1 ÷ 44100 = 0.000026757.. 秒

遅れることになります。音波がこの時間に進める距離は 340m/s をかけて約7.76mm。つまり、1サンプル遅らせることで、マイクが7.76mm近づいたのと同じことになります。
よって、かりに50cmの距離にマイクを立てた場合には、500 ÷ 7.76 = 約64サンプル分ラインの音を遅らせることで、ほぼマイクの音と同期することになります。

位相の話から始まって、結局はその本質からずれてしまった気もしますが、マイクとラインの音ををミックスしているしている方、この辺りのことを気にしてみると面白いかも?

posted by みっつん at 00:08| Comment(4) | 録音関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ここでは、お久しぶりm(_ _"m)ペコリ
私もま〜〜〜〜ったく書いてないですわw

で、こういうことはプロの現場だとどうしてるのでしょう?

コータローの録音風景の写真で見たことありますが、オンマイクだけで6本くらい、オフマイクで4本くらい立ってましたよね。
訳わかんなくなりそう( ̄▽ ̄;)
Posted by のぶぞ〜 at 2013年06月29日 07:16
>のぶぞーさん
プロの現場でもマイク間の位相差が出ないように調整しているみたいですよ。
特にドラムの録音なんかは位相の調整がかなり難しいとか。
ギター1本でよかったよかったw
Posted by みっつん at 2013年06月29日 09:30
今日更新が再開されている事に気づきました!大興奮嬉しいです!笑

NV性能に関わる部品だったりすると,打ち消す方向に検討があったりで,一度は触れてるはずの検討事項なのに,ミックスで一切気にしてませんでした....
この記事読んで『言われてみたら確かに確かに』と思いながら,今まで気にしてなかった自分が恥ずかしくなりました...苦笑
ハウリングも絡めた押尾低域の作り方 なんかをいつかお願いします!
周波数云々うといもので...
Posted by GO at 2013年07月28日 21:36
>GO君

NV性能って何かと思ったら専門分野の話なんですね。なるほど関係ありそう!
偉そうに書いてますけど、僕もこの辺意識し始めたのは最近だったりします(爆) ハウリング絡めた低域…、書いてみたいけどまだまだその辺は分からないですねー。むしろGO君に書いてもらいたい!
Posted by みっつん at 2013年07月29日 21:50
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